「資金繰りの改善策としてファクタリングを考えているけれど、会計処理に自信がない…」と悩んでいませんか。
本記事では、ファクタリング仕訳の基本から実務での注意点、決算・税務への影響まで、経理実務に役立つ内容をまとめました。
この記事を読めば、ファクタリングを導入する際の会計面での準備が整うはずです。
ファクタリングの仕訳について知ろう
ファクタリングを資金調達に活用する際には、正確な会計処理が大切です。処理を間違えると決算書の数値に大きく影響し、税務調査でも問題として指摘されることがあります。
適切な仕訳の手順をしっかりと理解しておくことで、スムーズな資金調達を進められるでしょう。
ファクタリングってどんなもの?
ファクタリングは、取引先への請求金額(売掛金など)を早めにお金に換える方法です。
銀行からお金を借りる場合と違い、請求金額を買い取ってもらうか、保証してもらうことですぐに資金を確保できます。
銀行借入れでは会社の決算書や事業計画が審査の中心となりますが、ファクタリングでは取引先がきちんと支払える会社かどうかを重視します。
そのため、会社の業績が多少悪くても、信用できる取引先との取引があれば、必要な資金を確保できるのです。
ファクタリングの良い点は、すぐに運転資金が手に入るだけでなく、決算書の内容も改善できることです。売掛金が現金に変わることで、会社の支払能力を示す指標(流動比率)が良くなり、企業の財務状態がより健全に見えるようになります。
ファクタリングにはどんな種類がある?
ファクタリング取引の仕組みには、大きく分けて2社型と3社型があります。2社型は、会社がファクタリング会社に直接売掛金を売り、すぐに資金を受け取る方法です。
3社型では、支払う側の会社も含めた3社で契約を結び、支払いの時期や方法を決めます。
病院向けの診療報酬(保険の支払金)に特化したファクタリングなど、業界ごとに特別な仕組みもあります。
会計処理の方法は、売掛金を完全に売り切る「買取型」と、売掛金はそのままで保証だけを受ける「保証型」の2つです。それぞれ仕訳の方法が違うので、契約を結ぶ前にどちらの方式なのかをよく確認しておくことが大切です。
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買取型と保証型で仕訳が変わる?
買取型ファクタリングでは、売掛金を完全に売却してお金を受け取ります。例えば100万円の売掛金を95万円で売却した場合、差額の5万円は「売掛債権売却損」という費用として計上します。買取型はすぐに確実に資金を得られる半面、手数料が高めです。
一方、保証型ファクタリングでは売掛金は会社の帳簿に残したまま、ファクタリング会社に保証料を支払います。
取引先から予定通り入金があれば普通の売掛金回収として処理し、もし支払いがなかった場合は保証を受けた入金として記帳。保証型は手数料が比較的安いものの、売掛金が残るため決算書上のメリットは小さくなります。
どちらを選ぶかは、会社の資金繰りや取引先との関係を考えて選びましょう。
ファクタリングで使う勘定科目と仕訳例
ファクタリングで用いる勘定科目はいくつかあります。ここでは各勘定科目の内容と仕訳例を解説します。
ファクタリングに関連する主な勘定科目
会計処理で用いる勘定科目は取引の実態を正確に表現する重要な要素です。
- 売掛金:通常の営業活動による債権
- 未収入金:営業外の債権
- 売掛債権売却損:債権をファクタリング会社へ売却する際の手数料
- 支払手数料:保証型で発生する手数料
- 貸倒損失:回収不能となった債権
- 雑収入:保証履行による入金
会計処理の選択は税務上の取り扱いにも影響を与えます。手数料は損金算入可能ですが、勘定科目の選択を誤ると税務調査での指摘対象となる可能性があります。経理担当者との密な連携により、適切な処理方法を選択することが望ましいでしょう。
具体的な仕訳例を見てみよう
100万円の売掛金を95万円で売却する例では、次のような流れになります。
まず95万円が口座に入金され、差額の5万円は「売掛債権売却損」として費用に計上。そして売掛金100万円の記録を消します。
保証型では、例えば売掛金100万円に対して保証料が3万円かかる場合、まず保証料3万円を「支払手数料」として支払い。売掛金100万円はそのまま記録に残し、後日取引先から入金があった時に普通の入金として処理します。
なお、手数料に関する消費税の処理には注意が必要です。売掛金を売却すること自体には消費税はかかりませんが、手数料分には消費税がかかります。
仕訳をする時は、手数料と消費税を分けて記帳することで、後の消費税の申告を正確に行えるでしょう。
特殊なケースの仕訳
売掛金の一部だけをファクタリングすることも少なくありません。
例えば、ある取引先への売掛金が200万円あるとき、その半分の100万円だけをファクタリングする場合は売掛金を2つに分けて記帳し、残りの100万円は通常の売掛金として管理します。
また、一度売却した売掛金を買い戻すことも。買戻しの際は、支払った金額を現金で記帳し、売掛金を元に戻す処理を行います。このとき買戻しの手数料がかかれば、それも「支払手数料」として別に記帳するようにしましょう。
会計ソフトでのファクタリング処理と注意点
ファクタリング取引を正確に記録するためには、使用するソフトの特徴を理解し、適切な設定をしておく必要があります。
初めに基本的な設定をしっかり行えば、日々の経理作業がスムーズに進められるでしょう。
クラウド型会計ソフトでの処理方法
クラウド会計ソフトの良い点は、取引内容がすぐに反映され、会社の資金状況をいつでも確認できることです。
まずは勘定科目の設定で、ファクタリング用の項目(「売掛債権売却損」や「支払手数料」など)を登録しておきましょう。
よく行う取引は、パターンとして登録しておくと便利です。
例えば、毎月同じような金額でファクタリングを利用する場合、一度パターンを設定しておけば、入金があった時に自動的に仕訳が作成されます。
パッケージ型会計ソフトでの入力方法
パソコンにインストールして使う会計ソフトでは、使い始める前の準備が大切です。
まず、勘定科目の設定を行い、ファクタリング会社ごとに取引先の項目(補助科目)を登録します。これにより、会社別の取引内容が簡単に確認できるようになります。
大切なデータを守るため、毎日の作業が終わったらバックアップを取りましょう。会計データは税務調査の際の証拠となるので、最低でも7年間は保管する必要があります。
ファクタリング仕訳時の注意点
ファクタリングは、借入れではなく売掛金を売却する取引です。
売掛金を売却した時点で所有権が移るため、売却代金には消費税はかかりません(手数料分には課税されます)。
特に気をつけたいのが手数料の処理方法です。手数料は「売掛債権売却損」として記帳し、「支払利息」として処理してはいけません。この点を間違えると、税務調査で指摘を受ける可能性があるので、経理担当の方とよく確認しておきましょう。
また、仕訳をするタイミングは契約書に書かれた取引開始日が基準となります。実際の入金日が異なる場合は、一時的に「未収入金」や「未払金」として記帳し、後で実際の入出金と突き合わせることで、正確な記録を保てます。
まとめ
ファクタリングは、会社の資金繰りを助ける便利な方法です。ただし、会計処理は慎重に行う必要があります。正しい処理を行うために、経理担当者や税理士とよく相談しながら進めましょう。
きちんとした会計処理を行うことで、会社の経営内容が明確になり、銀行や取引先からの信頼も高まります。会計ソフトをうまく使いこなせば、必要な情報をすぐに確認でき、スピーディーな経営判断にも役立つはずです。
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